尾崎治夫さん

　2008年5月31日、東久留米社保協主催で行われた「後期高齢者医療制度学習会」は、80名超の市民が参加し、立ち見も出る盛況ぶりでした。
　講師に前東久留米市医師会長の尾崎治夫さんを招きお話を聞きました。

　講師　尾崎治夫さん（前東久留米市医師会長）のお話

「日本の医療費は高い」は本当か？
　日本で医療に使われるお金は決して多くありません。たとえば、国内で使われるお金を見てもパチンコは３０兆円、レジャー産業全体でも７２兆円なのに対し、国民医療費は年３２兆円です。
　諸外国と比べても、対ＧＤＰ比で見るとは日本の医療費はＯＥＣＤ諸国中２２位。しかもＷＨＯの健康達成度では第１位、スウェーデンより乳幼児死亡率は低い。
　これだけの低コストで高い医療水準を維持してきたのは、設備投資や人件費を抑えてきた医療関係者の努力と献身があったればこそです。
公的医療保険が弱い国ほど医療費にお金がかかる
　特に強調すべきは公的医療保険が弱い国ほど医療費にお金がかかるということです。映画「シッコ」でも紹介されましたがアメリカでは公的保険がほとんどないため民間保険に入れない人が４５００万人もいます。盲腸で１日入院しただけで２４０万円も請求されるので、ひとたび病気になれば人生アウトです。アメリカの医療には見習うべきところも多々ありますが、これを日本の手本にするわけにはいきません。イギリスでもサッチャー政権下で同様の切り捨て政策が取られ救急患者の平均待ち時間が３．５時間となり、ブレア政権になって見直され医師の数を５年で１万人増やして倍増することを公約しました。
医療を経済に合わせるのではなく、経済を医療に合わせることが必要
　さらに高齢化が進んでいる日本では医師が１２万人は足りないのです。よく３時間待ちの３分間診療などと言われます。開業医の私でも月に３００人の患者を診なければなりません。地域の拠点の医療機関の医師なら、当直があると３２時間連続勤務のまま手術をしなければならいこともあります。とにかく医療スタッフは疲れ果てています。
後期高齢者医療制度は本来このことにこそ取り組まなければならないのですが、小泉構造改革以来社会保障予算に毎年２２００億円もの削減を課しています。これが続けば日本の公的医療は数年を待たずして崩壊するでしょう。
　政府は国の借金が８３８兆円になったと言って社会保障削減だ消費税増税だと国民を脅していますが、プラスの資産を含めれば決して異常な額とは言えません。むしろ大企業や資産家にもっと税負担させるべきです。
　医療を経済に合わせるのではなく、経済を医療に合わせることが必要です。

4月19日にはマイケル・ムーア監督の映画「シッコ」の上映会も行い、昼夜のべ400名が鑑賞しました。